半年ほど前に エレコムの業務用激安無線APを買った話 を書いたのですが、最近になって動作が不安定になることがあり、再起動してやらないといけないのが不満でした。
さらに、プロバイダーから貸与されているルーターに直結しているので、いろいろ細かな設定ができずフラストレーションが溜まっていました。
そこで今回、思い切って業務用ルーターを導入してみることにしました!
業務用ルーターなら動作も安定しているはずですし、VLANを切ったりアクセス制限をしたりといろいろ遊べそうです。
ヤフオクで探してみたところ、NECの業務用ルーター IX2207 が2台セットで送料込み5千円だったので即落札!
ネット上にYAMAHA RTXシリーズの設定情報はたくさんあるものの、IXシリーズの記事は意外と少なかったため自分の備忘録として設定例をまとめておくことにします。
IX2207のかんたんスペック
| IX2207 | IX2215 | RTX1200 | |
|---|---|---|---|
| WAN | 10/100/1000 x2 | 10/100/1000 x2 | 10/100/1000 x2 |
| LAN | 10/100/1000 x4 | 10/100/1000 x8 | 10/100/1000 x8 |
| IPv4転送性能 | 2Gbps | 2Gbps | 1Gbps |
| NAPTセッション数 | 250,000 | 250,000 | 20,000 |
| 大きさ | 210 x 43 x 148 | 210 x 43 x 297 | 220 x 42.6 x 270 |
| EOL(サポート終了) | 2028/04 | 2030/04 | 2021/05 |
| 中古落札相場 | 2台で5千円 | 5千円 | 3〜5千円 |
IX2207と同世代で人気の高い IX2215 と、相場が同じくらいの RTX1200 とでかんたんなスペック比較表を作ってみました。
中古で入手する上ではヤマハよりもNECの方がコスパが良いことが一目瞭然だと思います。
RTX1200だとNAPTセッション数が2万しかないのが気になるところ。
大量のデバイスがある家だと、これくらいなら使い尽くす可能性がありますからね〜
IX2215との違いだと…
LANポートの少なさとEOLが短い点はデメリットですが、本体サイズと値段が半分くらいなのはなかなかの利点だと思います。
僕の場合は有線接続できるデバイスをそんなにたくさん持っていなかったことと、セキュリティについても「GUIとSSHとTelnetあたりを塞げばそんなに問題にならないかな」という楽観視に基づいてIX2207を選びました。
おうちネットワーク構成
というわけで早速設定していくのですがその前に。 うちのネットワーク構成がわからないと以降の設定をみても ちんぷんかんぷん だと思うので軽く説明します。

ネットワーク構成図はこんな感じです。
わけあってONUのルーター機能をオフにできないので2重ルーター構成にしています。 なのでIPv4オンリーです。
無線APはうちに転がっていた TPLink EAP660 を使いました。 あんまり信用していないので外部ネットワークには出られないようにしています。
他のサイトとの大きな相違点として、うちは VLANを切ってアクセス可能なエリアを制限 しています。 X24→X36→X48の順に、上流から下流方向へのみアクセス可能です。
ちなみに24は「つよ」、48は「よわ」の語呂合わせになっています。 覚えやすくていいでしょ
Xの部分に入る数字は有線接続だったり広告削除用だったりで変わりますが、今回の説明にはあんまり関係ないので割愛します。
IX2207の初期設定
本設定に入る前に、IX2207の初期設定をします。
設定にあたってRJ45ポートのシリアルケーブルが必要になります。
スーパーリセット
前の環境の設定が残ってたりパスワードがかかっていたりするので初期化してやります。
シリアル接続をした状態でix2207の電源を入れ、コンソールに
Loading:#######…
とでている間に Ctrl+C を押します。
すると
boot[0]>
と表示されるので cc と入力して y、その後 b を押すとブートします。
ファームウェアアップデート
NECのサイト から最新のファームウェアをダウンロードし、 firmware.rap にリネームしてFAT32形式のUSBメモリのルートに配置します。
USBメモリをIX2207左側の、USB0 と書かれたポートに差します。
Router# config Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
これでconfigモードに入ります。 configモードの入り方については以後省略します。
Router(config)# device USB0
Router(config-USB0)# no shutdown
Router(config-USB0)# exit
Router(config)# usbmem enable
Router(config)# show usbmem
USB Mass Storage Device (usbmem0)
total 30984945664 bytes
12746752 bytes used
30972198912 bytes free
Router(config)# software-update usbmem0:/firmware.rap
USB0ポートを有効化したのち、ファームウェアをアップデートします。
アップデートが完了した後、reload と入力して y を押すと再起動します。
ユーザーの作成
Router(config)# username USER password plain 1 PASSWORD administrator
管理ユーザーを作成します。 USER と PASSWORD の部分は適宜置き換えてください。
Router(config)# copy running-config startup-config
これで再起動しても設定が反映されるようになります。 これも以後省略します。
IX2207の設定
USBメモリに設定をバックアップする
設定がおかしくなってもすぐに戻せるよう、定期的にバックアップを取るようにしてください。
device USB0 no shutdown exit usbmem enable show usbmem
USBポートを有効化して
copy startup-config usbmem0:/startup.cfg
これでバックアップ
copy usbmem0:/startup.cfg startup-config
これでバックアップからの復元ができます。
NTP
ntp ip enable ntp server 17.253.68.253 ntp retry 10 ntp interval 3600
AppleのNTPサーバーを使っています。 NICTがよければ 61.205.120.130 に変更してください。
DNS
dns cache enable dns cache max-records 512 dns cache lifetime 300 dns ncache lifetime 60 proxy-dns ip enable proxy-dns server 1.1.1.1 priority 40 proxy-dns server 1.0.0.1 priority 30 proxy-dns server 8.8.8.8 priority 20 proxy-dns ipv6 enable
Cloudflareのサーバーを優先するようにしています。
UFSキャッシュ
ip ufs-cache max-entries 65535 ip ufs-cache enable
速くなるらしいのでやっておきます。
WANの有効化
interface GigaEthernet0.0 ip address dhcp receive-default no shutdown
MSS/MTU
interface GigaEthernet0.0 ip tcp adjust-mss 1420
pingで測ったら1420だったので一応やっています。 効果は実感できていませんが…
NAT/NAPT
interface GigaEthernet0.0 ip napt enable
IPv4なのでNAPTします。
VLAN
bridge irb enable device GigaEthernet2 vlan-group 1 port 1 2 3 interface GigaEthernet2.0 no ip address bridge-group 100 no shutdown interface GigaEthernet2.3 encapsulation dot1q 136 tpid 8100 auto-connect no ip address bridge-group 136 no shutdown interface BVI13 ip address 192.168.136.1/24 bridge-group 136 no shutdown interface GigaEthernet2:1.0 no ip address bridge-group 36 no shutdown
LANポート4に無線APを繋ぐ想定です。
VALNタグのないパケットは GigaEthernet2.0 に、VLANタグがついたパケットは対応する GigaEthernet2.X に行きます。
例えば136のタグが付いている場合、GigaEthernet2.3からBVI13に行くようになっています。
これは有線と無線を同じインターフェースで処理したかったからそうしただけなので、BVIを作る必要は多分ありません。
それ以外のLANポートは 192.168.36.1/24 に回しています。
ACL
ip access-list acl_dhcp permit udp src any sport any dest any dport eq 67 ip access-list acl_dhcp permit udp src any sport any dest any dport eq 68 ip access-list acl_x36 permit ip src 192.168.124.0/24 dest any ip access-list acl_x36 permit ip src 192.168.224.0/24 dest any ip access-list acl_x36 permit ip src 192.168.36.0/24 dest any ip access-list acl_x36 permit ip src 192.168.136.0/24 dest any ip access-list acl_x36 permit ip src 192.168.236.0/24 dest any ip access-list acl_permit permit ip src any dest any ip access-list dynamic acl_dynamic access acl_permit interface BVI13 ip filter acl_dhcp 1 out ip filter acl_x36 2 out ip filter acl_dhcp 1 in ip filter acl_dynamic 100 in
静的フィルタでDHCPは双方向に許可、VLAN36/136/236/124/224から来たパケットを許可しています。 また、動的フィルタによってVLAN136のデバイスから開始された通信の戻りのパケットも許可しています。
in/outはルーターから見た方向なのでデバイスに入っていく方が「out」、デバイスから来た方が「in」になります。 ややこしい!
動的フィルタはフィルタをかけた方と逆向きのパケットに迂回路をつくるものなので「in」に適用しています。 すごくややこしい!!
DHCP
ip dhcp enable ip dhcp profile normal_136 assignable-range 192.168.136.2 192.168.136.254 subnet-mask 255.255.255.0 default-gateway 192.168.136.1 dns-server 192.168.136.1 lease-time 86400 fixed-assignment 192.168.136.172 00:00:5e:00:53:aa interface BVI13 ip dhcp binding normal_136
サーバーのIPを固定しています。
QoS
ip access-list ipv4_rtp permit udp src any sport range 16384 32767 dest any dport range 16384 32767
class-map match-any voice
match ip access-list ipv4_rtp normal
policy-map rtp-policy
class voice
set ip dscp 46
class class-local
class class-default
interface GigaEthernet2.0
service-policy enable
service-policy input rtp-policy
service-policy output rtp-policy
ビデオ通話が安定するらしいので一応設定しています。
基本インターフェースである GigaEthernet2.0 に適用しておけば、GigaEthernet2:1.0 や GigaEthernet2.1 などのサブインターフェースでも有効になります。
というわけで、業務用ルーターと業務用APをつかって快適なインターネット環境を構築することができました。
とくべつ通信速度が上がったとかそういうことはないのですが、突然つながらなくなったりIPアドレスが降ってこなくなったりといったトラブルから解放されたのでとっても快適になりました♪
IXルータなら比較的新しめのモデルがお安く手に入るのでおすすめですよ!
僕が設定したコンフィグは GitHub にアップロードしてあるので、うまくいかない場合の比較などにどうぞ〜
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